その日暮らしの記
ぼやき日記

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麻山事件

 ソビエト軍の侵攻と前後して、旧満州の開拓団に参加していた日本人たちを襲った数奇な運命。その事実は終戦後、徐々に明らかになっていったのだが、その中にあまりもセンセーショナルに取り上げられた「悲劇」があった。自ら死を選んだ開拓団の面々は、婦女子や老人ばかりということもあり、薬物による死がほとんどであったが、唯一「麻山」での自決は、わずかに残った男子団員の「銃剣」により、四百人以上の婦女子が「介錯」されたというのである。同じく満州からの引揚者であり、開拓団の悲劇を追いかけていた著者は、ひょんなことからこの「事件」の存在を知り、わずかに残った生存者たちと知己を得るに至って、「事件」そのものを「正確」に記録していくことになるのだが……というノンフィクション。
 夢と理想を胸に抱きながら開拓団に参加し、戦争が敗戦濃厚になると早々に軍や国家に見捨てられ、ぼろぼろに逃走に逃走を重ねた結果、その手で家族を殺めざるを得ず、それでいて自分は死ぬこともできず、重い十字架を背負ったまま長い後半生を生きなければならなくなった男たち。重い口を閉ざした彼らの証言を、著者は時間をかけて少しずつ引き出していく。冒頭から非常に重苦しく、なかなか読み進むことができなかった(特に「その日」の出来事はやはり衝撃的だった)。だが時には自分の体験とオーバーラップさせながら、丹念に「事件」を追いかけていく著者の作風と描写力は素晴らしく、大いに見せられた。
 注目したいのは、農民子弟(次男や三男坊たち)の救済を建前に移民を組織(政治的に暗躍)した人物の戦後の手のひら返しの酷さ(詳細を書くのも不快)と、同じ悲劇を体験した「はず」の生存者たちの証言が余りにも異なっている(彼ら間で厳しいやりとりなどもあったみたいである)あたり。ネット界隈では(実はリアルな知人にいたりもして困ってしまうのだけど)、憲法改正とか特定の国に対する弾圧とか、いわゆる好戦的な思想や主張の書き込みが目立つけれども、個人的にこれらにどうしても引っ掛かりを感じてしまうのは、ここらへん(国家の「裏切り」行為と人の「記憶」の不確かさ)にあるんだろうなあと、改めて思いましたです。「弱者」ばかりが「責」を負わねばならぬ世界なんて、変えていかねばならないと、強く感じましたです。名著。



文庫 麻山事件 満州の野に婦女子四百余名自決す (草思社文庫)文庫 麻山事件 満州の野に婦女子四百余名自決す (草思社文庫)
(2011/12/02)
中村 雪子

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